コラム

COLUMN

投稿日:2026年3月13日

コラム

成年後見人向け:物品管理の実務と失敗例~後見業務で起こる財産トラブル対策~

成年後見人に求められる「物品管理」とは何か

 

成年後見制度は、判断能力が不十分になった高齢者や障害のある方の生活と財産を守るための制度です。後見人は家庭裁判所から選任され、本人の財産管理や生活支援を行います。

多くの人が「財産管理」と聞くと、預金や年金の管理を思い浮かべるかもしれません。しかし、実務ではそれだけではありません。自宅にある家財や貴金属、骨董品などの動産(物品)も財産の一部として管理対象になります。

特に一人暮らしの高齢者の場合、長年の生活の中で蓄積された物品が多く残されていることがあります。現金や通帳だけでなく、貴金属や時計、コレクションなどの価値ある物品が自宅に保管されているケースも珍しくありません。

さらに、高齢者世帯では「タンス預金」や金製品などが生活空間の中に分散して保管されていることもあります。本人がどこに保管しているのかを明確に説明できない場合もあり、後見人が就任した際に思いがけない場所から現金や貴金属が見つかるケースもあります。

そのため成年後見人には、これらの物品を適切に把握し、管理する実務が求められます。物品管理を怠ると、後から「財産がなくなった」「誰かが持ち出した」などのトラブルにつながる可能性があります。

 


 

 

成年後見人が管理すべき「物品」とは

 

成年後見人が管理する財産にはさまざまな種類があります。物品として管理対象になる主なものは次の通りです。

・現金

・通帳や印鑑

・貴金属(指輪、ネックレスなど)

・時計

・ブランド品

・骨董品

・記念コインや金貨

・不動産関係書類

・株券や証書

・家財

これらの中には、一見すると価値が分かりにくい物もあります。例えば、古い指輪やネックレスは装飾品として扱われがちですが、金やプラチナで作られている場合、資産価値があることもあります。

また、見落とされがちな物品として次のようなものがあります。

・金歯

・古い腕時計

・ブランドバッグ

・古銭

・骨董品

特に高齢者の家庭では、昔の記念コインや貴金属が保管されていることもあり、知らずに処分してしまうと財産を失う可能性があります。

さらに、実務では本人の思い出の品と資産価値のある物品が混在しているケースも多く見られます。アルバムや記念品の中に貴金属が紛れていることもあるため、整理の際には丁寧な確認が必要です。

そのため後見人は、物品の価値を判断する前にまず存在を把握することが重要です。

 


 

 

成年後見人の物品管理の基本実務

 

実務で物品管理を行う際には、いくつかの基本的な手順があります。

 

1 物品リストを作成する

 

最初に行うべきことは、財産の一覧を作成することです。これは家庭裁判所に提出する「財産目録」にも関係します。

具体的には

・物品の種類

・数量

・保管場所

・写真記録

などを整理しておくと、後から確認しやすくなります。

写真を残しておくことは特に有効です。物品の状態や数量を客観的に記録できるため、後のトラブル防止にも役立ちます。

また、スマートフォンで撮影した写真を日付付きで保存しておくと、管理記録としても活用できます。実務では、写真を一覧表と一緒に保存しておく方法がよく用いられています。

 

2 保管方法を決める

 

貴重品や現金などは、自宅に置いたままにするより安全な保管方法を検討する必要があります。

例えば

・金庫保管

・銀行の貸金庫

・信頼できる保管場所

などがあります。

重要なのは、後見人が管理できる状態を保つことです。親族が自由に出入りできる場所に貴重品を置いておくと、紛失や持ち出しの原因になることがあります。

また、本人が施設に入所する場合などは、居宅に残された家財の管理方法も検討する必要があります。空き家状態になる場合には、防犯面や盗難リスクにも配慮することが求められます。

 

3 記録を残す

 

後見人の業務では、家庭裁判所への報告が求められます。そのため、物品の管理状況や処分の経緯は記録として残しておく必要があります。

例えば

・処分した日

・処分理由

・売却金額

・立ち会った人

などを記録しておくと、後から説明が必要になった際にも対応できます。

特に高額な物品を売却する場合には、査定書や売却証明書などを保存しておくと、透明性の高い管理につながります。

 


 

 

実務で多い物品管理の失敗例

 

成年後見の現場では、物品管理に関するトラブルが発生することがあります。ここでは実際によくある失敗例を紹介します。

 

失敗例① 財産価値を確認せず処分

 

古いアクセサリーや時計などを「価値がない」と判断して処分してしまうケースがあります。しかし、実際には貴金属やブランド品として価値がある場合もあります。

価値が不明な物品は、専門業者に確認するなど慎重に対応することが大切です。

 

失敗例② 親族が物品を持ち帰る

 

「形見として持って帰りたい」と言われ、親族が物品を持ち帰るケースもあります。本人の意思が確認できない状況では、後見人が安易に許可すると後で問題になることがあります。

親族間で意見が分かれることも多いため、物品の持ち出しは慎重に判断する必要があります。

 

失敗例③ 記録が残っていない

 

物品を整理したものの、何をどのように処分したのか記録が残っていない場合、家庭裁判所への報告が難しくなることがあります。

管理の透明性を確保するためにも、記録は必ず残すことが重要です。

 


 

 

家庭裁判所が問題視するケース

 

成年後見人の業務は家庭裁判所の監督のもとで行われます。そのため、次のようなケースは問題視される可能性があります。

・財産の所在が不明

・無断での処分

・私的利用

・記録不足

特に問題になるのは「財産がなくなった理由が説明できない場合」です。

後見人は本人の利益のために財産を管理する立場にあるため、管理体制が不十分だと責任を問われることがあります。

そのため、物品管理では「誰が見ても分かる管理状態」を作っておくことが重要になります。

 


 

 

物品管理でトラブルを防ぐための実務ポイント

 

物品管理のトラブルを防ぐためには、いくつかの実務ポイントがあります。

まず重要なのは、写真とリストによる記録管理です。物品の状態を客観的に記録しておくことで、後から確認できるようになります。

次に、保管場所を明確にすることです。貴重品は安全な場所にまとめて保管し、管理状況を把握しやすくすることが大切です。

また、親族との関係にも配慮する必要があります。物品の管理状況を適切に共有しておくことで、不信感や誤解を防ぐことができます。

さらに、重要な物品については第三者の確認を入れることも有効です。例えば、専門業者や士業などに立ち会ってもらうことで、管理の客観性を高めることができます。

後見人の役割は「処分すること」ではなく、本人の財産を守ることです。そのため、判断に迷う場合は慎重な対応が求められます。

 


 

 

家財整理業者と連携するメリット

 

高齢者の自宅には多くの家財が残されていることがあり、後見人だけで整理するのは大きな負担になる場合があります。

そのような場合には、家財整理や遺品整理の専門業者と連携する方法もあります。

専門業者は

・家財の仕分け

・貴重品の探索

・物品の整理

・写真記録

などをサポートすることができます。

後見人が専門業者と連携することで、物品管理の透明性を高めることにもつながります。また、第三者が関与することでトラブル防止にも役立つ場合があります。

特に、長期間住んでいた住宅では想像以上に多くの物品が保管されていることがあります。専門業者の協力を得ることで、効率的に整理を進めることができ、後見人の負担軽減にもつながります。

 


 

 

まとめ

 

成年後見人の業務では、預金や年金の管理だけでなく、家財や貴金属などの物品管理も重要な役割になります。

物品管理のポイントは次の3つです。

・物品を把握する

・記録を残す

・適切に保管する

これらを徹底することで、家庭裁判所への報告や親族との関係においてもトラブルを防ぐことができます。

成年後見制度の実務では、財産を守るための慎重な対応が求められます。物品管理の仕組みを整えることは、後見人の業務を円滑に進めるうえで重要なポイントと言えるでしょう。

記事一覧へ