2024.04.05ブログ

家族信託って何?メリットやデメリットを知りたい!

終活や生前整理などを考えたときに、目にすることもある家族信託。

2025年には高齢者の5人に1人が認知症といわれる中で、認知症対策としても注目されているようです。

家族信託とは、不動産や金銭などの財産をあらかじめ信頼できる家族に託し、管理や処分を任せることができる財産管理の方法のひとつです。

家族信託を有効に活用すれば、財産の所有者である親が認知症になってしまったときにも資産が凍結されることなく、子どもが財産に管理や運用、処分をすることができます。

今回は、家族信託の仕組みとメリットやデメリットについてご紹介したいと思います。



◎家族信託の仕組み


家族信託は、【①委託者】、【②受託者】、【③受益者】の3者で行われます。

【①委託者】とは、財産のもともとの所有者で、財産を託す人です。

【②受託者】とは、財産の管理や運用、処分を任される人です。

【③受益者】とは、財産権を持ち、財産の利益を受ける人です。

【①委託者】が財産の管理を【②受託者】に任せ、その財産を【②受託者】が管理し、その財産から発生した利益を【③受益者】が受け取る仕組みになっています。

家族信託では、【①委託者】と【③受益者】が同じ人になるケースが多いです。

そのため実際、親のために子どもが財産を管理し、利益は所有者である親が得るということがほとんどです。



◎家族信託はどのようなときに使えるのか


家族信託は、祖父母や両親が認知症になったときに、子どもが金銭を使えたり、不動産  を処分したりすることができるという利点があります。金銭や不動産の売買代金は、財産権を持つ祖父母や両親のために使用します。

親が収益不動産を持っている場合も、認知症対策として家族信託は有効です。子どもに収益不動産を託すことにより、高齢の親が認知症になったとしても事業を継続することができます。親のほうも面倒な不動産管理は子どもに任せることができ、収益は自分が受け取ることができるので安心した隠居生活を送ることが出来ます。

また、知的障害の子どもがいる家庭の場合、親が亡くなった後の子どもへの心配は絶えないでしょう。

もし、親亡き後に頼れる兄弟姉妹などがいる場合には、家族信託を使って障害のある子どもを守る仕組みを作ることが出来る可能性があります。

頼れる兄弟姉妹などに、あらかじめ財産を信託しておき、親亡き後には信託した財産から障害のある子どものためにお金をつかってもらいます。障害のある子どもが亡くなったときには、残った財産はその面倒をみてくれた兄弟姉妹に渡したり、お世話になった施設等に寄付したりすることができます。子どもが亡くなった後のことを親が前もって決めておけるのは信託でしかできません。



◎家族信託のメリット


 

*受託者が広い裁量をもって財産管理ができる

家族信託の大きなメリットとして、自分が元気なうち自分の意向に沿った財産管理を家族に任せることができる点があります。

認知症対策としてよく上げられる『任意後見制度』では、後見人の負担と制約が多いことがデメリットとなり、さらに後見人は本人の判断能力が衰えるまで財産の管理はできません。

成年後見制度では、本人の財産を守ることに重点がおかれます。そのため本人の財産を減らさないことが重要視されるため、それに反するような財産の管理をすることはできません。

その点家族信託であれば、判断能力があるうちから財産管理を任せることができるうえ、もし本人が判断能力を失った場合でも、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに行うことができます。

 

*共有不動産の相続問題を予防することが出来る

共有不動産は、共同相続人が全員で協力しないと処分できないため、将来的に複数の相続人が不動産を共同相続してしまうと、管理処分権の問題が生じる可能性があります。

共有者としての権利や財産的価値は平等にしたままで、家族信託によって管理処分権限を共有者の一人に集約しておくことで、塩漬け不動産になることを防ぐことが出来ます。

 

*遺言書の代わりとして使える効力がある

遺言書を残そうとした場合には、民法で定める遺言書の方式・作成方法に沿ってしなければならず、手続きは厳しいものとなります。

家族信託であれば、委託者と受託者との契約で行われるので、遺言書作成のような厳格な方式によらず、自身の死後に発生した相続について財産を承継する人を指定することができます。

また、家族信託契約により承継者を決めておくことは、相続が発生した場合の遺産分割協議が不要となるという大きなメリットとなります。

遺産分割協議では、相続人全員で話し合い、誰が何を相続するのかを決めなくてはいけません。しかし、相続人の間で意向が合致しなかったり、相続人の一人が認知症等で話し合いができない場合は、相続の手続きはスムーズにできなくなります。

そのため、渡す側の親が財産の承継についてあらかじめ決めておくことは、認知症や相続争いによる遺産の凍結を防ぐためにも最も有効な方法となります。

 

*倒産隔離機能がある

家族信託の倒産隔離機能は、『将来自分(委託者)や受託者が信託財産に関係のない多額の債務を負ってしまった場合でも、信託財産は差し押さえられない』というもので、将来万が一、何かがあった場合にたいする備えになります。

ただし、信託財産は受益者の『信託受益権』に形を変えているため、受益者が強制執行などを受けるケースでは、財産を差し押さえられる可能性があります。

 


◎家族信託のデメリット


 

*身上監護をするには不十分なところがある

家族信託は、財産の管理や処分に必要な行為を家族に委ねる仕組みとなっているため、親が入居した施設の入居費用を信託された財産から支払うことはできても、親の代理人として入居契約をする権限はありません。

そのため身上監護についても十分な対策が必要であれば、成年後見制度の利用や子どもや信頼できる人をあらかじめ後見人に指定する任意後見契約を結ぶことを検討するのもよいでしょう。



 

*受託者を決めるときに揉める可能性がある

家族信託では、財産を適切に管理、処分できて且つ信頼できる家族がいるかどうかが大きなポイントとなります。

財産名義が受託者に代わるということは『委託者に判断能力があるうちから利用できる』というメリットはあるものの、自分の財産が自分の名義ではなくなってしまうことに抵抗感を持つ人もいるでしょう。

また、信頼されて任されたにも関わらず、財産管理がずさんな場合には、相続人の中から不満の声が上がってトラブルになる可能性もあります。

 

*節税対策にはならない

家族信託を行ったとしても、節税効果がある訳ではありません。

受益者となった人が財産を取得するわけではないのに『財産を取得した』とみなされるため、むしろ税金的には受益者の負担が大きいといってもよいかもしれません。

 

*遺留分侵害額請求をされる場合がある

家族信託契約によって決めた後継者に財産権(受益権)を承継する際に、遺留分を持つ相続人がいる場合、遺留分相当額のお金を請求してくる可能性があります。

遺留分とは、法定相続人に最低限保障された相続財産のことです。遺留分を侵害するような不平等な遺産分割がされた場合には、遺留分且つ侵害額請求という請求手続きが可能です。

遺留分侵害額請求は家族仲を壊してしまう可能性もある権利のため、遺留分が発生しないように設計することや、あらかじめ家族会議をしておくなど未然に防ぐ工夫をとっておくことも大切です。



以上、家族信託についてどんなメリットやデメリットがあるのかをみてきました。高齢化が進む現代社会では、多くの人が視野に入れておく必要のある対策の一つだと思います。

 
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