
朝晩の空気が少しずつ冷たくなり、秋の気配が深まってくると、「そろそろこたつを出そうかな」そんな気持ちになる季節がやってきます。
こたつは冬の幸せそのものです。温かい空気の中で、みかんを食べたりテレビを見たり、家族と団らんしたり。日本の冬の定番と言ってもいい存在でしょう。
しかし、遺品整理や生前整理に携わっていると多くのご家庭で、ある共通の課題に直面しているのを感じます。
「こたつを出す前に“ほんの少しだけ”整理しておけば、冬の暮らしは驚くほど快適になる」
このわずかな準備を怠ると、冬の間ずっと「散らかった部屋で動きづらくて片付かない」という状態になりやすいのです。こたつの季節は、“整理が苦手な人にとって最も散らかりやすい季節”と言えます。だからこそ、こたつを出す「前」が勝負なのです。
今回は、そんな冬支度の前にやっておきたい“リセット整理”の方法を、わかりやすくまとめてみました。毎年こたつを出している方はもちろん、今年こそ快適な冬にしたいという方にも役立つ内容です。
1.なぜ「こたつを出す前」が整理のベストタイミングなのか
こたつを出す作業は、部屋のレイアウトを大きく変えます。それまでのテーブルを移動し、カーペットを敷き、こたつ布団を広げ、さらにコードをコンセントに伸ばす。この一連の作業が、こたつを中心とした新しい生活の始まりを告げます。
この変更により、部屋の動線は夏よりもずっと狭くなります。そして冬の時期には、片付けを阻む特有の要素が重なります。
寒さから、物を元の場所に戻すのを後回しにしがちになる
日が短くなり薄暗さが増すため、活動的な気分になれない
洗濯物が乾きにくく、室内に物(衣類)が増える
こたつに入ってしまうと「もう立ち上がりたくない」という強い「こたつ魔力」が発生する
ひざ掛けや防寒グッズなど、季節の小物が大量に登場する
その結果、家の中には“床置きの物”が爆発的に増え、物を“戻す習慣”が崩壊しやすい季節となってしまいます。
さらに冬は風邪などで体調を崩しやすく、家にいる時間も長くなりがちです。散らかった部屋に長時間いることは、気分を落ち込ませたり、無意識のうちに疲れを溜めたりする原因にもなります。
この「こたつ魔力」が発動する前に、部屋の土台を整えること。それが、こたつを出す前の今が整理のベストタイミングである理由です。

2.リセット整理とは?冬の生活に合わせた“空間の再構築”
リセット整理とは、「一度こたつ周りをまっさらにする」ことから始める片付けの方法です。これは、日々の“ちょこちょこ片付け”とは異なり、冬のレイアウトに合わせて、部屋の空間と物の配置を根本から再構築する作業を意味します。
冬になると、私たちの生活に必要な物は一気に増えます。
ひざ掛けやブランケット
加湿器や空気清浄機
ストーブ、ヒーター、電気毛布などの暖房器具
厚手の部屋着や防寒靴下
乾燥対策のスキンケアグッズ
こうした季節物が大量に登場するため、既存の収納にも部屋にも大きな負担がかかります。
だからこそ、こたつを出す前に以下の三点を実行することが、冬を快適にする大きなカギとなるのです。
部屋から要らない物、夏の間に溜まった“滞留品”を取り除く
こたつを設置した後の狭くなった動線を意識して確保する
こたつ中心の生活を想定した“物の導線設計”を行う

3.ステップ①:こたつ予定の場所を“いったん空っぽ”にする
最初にやるべきことは、ただ一つ。
こたつを設置する予定の場所を“完全に空っぽにすること”です。
リビングやダイニング周りには、気づかないうちに生活必需品ではない細々としたモノが溜まっています。リモコン、新聞・雑誌、郵便物、飲みかけのコップ、薬、使いかけのお菓子、スマホの充電器、夏の間に使っていた小物など、驚くほど多くの小物が発見されるはずです。
まずはこれらをすべてどかし、床と空間を完全にリセットします。そして、元の場所に戻すのではなく、「冬の生活に本当に必要な物だけを厳選して戻す」という作業に切り替えるのがポイントです。
こたつ周りは冬の生活の中心地となります。ここがごちゃついていると、冬の間ずっと片付けられないストレスに悩まされます。理想は、“旅館や温泉の休憩室のように何もない、すっきりとした空間”を作ること。広いスペースを確保してからレイアウトを考えると、こたつ生活の快適度はまったく違ってきます。

4.ステップ②:“床置きゼロ”を目指して収納を設計する
冬に部屋が散らかりやすい最大の理由は、物を使ったらすぐに床に置いてしまう、「床置き」が増えるからです。
床置きが増えると、見た目が散らかるだけでなく掃除のハードルが上がり、ホコリが溜まりやすくなります。さらに足元が危険になり、片付ける気力までも奪うという悪循環を生みます。
この悪循環を断ち切るために、“床置きゼロ”を目指しましょう。
床置きを防ぐための具体的な工夫
ワンアクションで片付けられるカゴを配置する:こたつで使う細かい物をひとまとめにするための、小さめのカゴを近くに用意します。「使ったら入れる」というワンアクションで片付けが完了するように設計します。
キャスター付きワゴンで“こたつ周りステーション”を作る:ワゴン一台に、ティッシュ、リモコン、充電器、ハンドクリーム、喉スプレーなどのこたつ必需品を整理して収納します。ワゴンなら必要な時だけ引き寄せ、使わない時は目立たない場所に移動できるため、動線を邪魔しません。
ブランケットは「一人一枚」に制限する:ブランケットが複数枚あると、それだけで一気に部屋が散らかって見えます。家族一人あたりの枚数を制限し、「誰が使うものか」「使わない時はどこにしまうか」を明確にすることで、床に散乱するのを防ぎます。
特に家族が多い家庭ほど、この収納設計の工夫は絶大な効果を発揮します。

5.ステップ③:暖房器具の安全チェックは冬の必須項目
こたつと同時に、部屋に登場するのが各種暖房器具です。しかし、暖房器具は扱いを間違えると、火災などの大きな事故につながるため、細心の注意が必要です。
遺品整理の現場でも、「ここ危なかっただろうな…」と感じるような、危険な配線や配置を見かけることが毎年必ずあります。
特に危ないポイントとチェック項目
こたつコードや電気毛布コードの劣化:コードの外側の被覆が破れていないか、ビニールテープなどで補修されていないかを点検します。発熱や火災の直接的な原因になります。
コンセント周りのほこり:コンセントとプラグの隙間にホコリが溜まると、湿気を吸ってトラッキング現象(発火)の原因になります。使用開始前に必ず乾いた布で拭き取りましょう。
タコ足配線による電力オーバー:一つのコンセントに、こたつ、電気ストーブ、ホットカーペットといった高熱器具を複数つなぐのは危険です。電力オーバーによるブレーカーダウンや発熱を防ぐため、壁のコンセントを分けて使うようにしましょう。
ストーブやヒーター周りの燃える物:ストーブやヒーターの近くに、衣類、段ボール、新聞、雑誌などが置いてないか確認します。冬は部屋が乾燥し、火の回りが早くなります。
この安全チェックを“こたつ設置前”に済ませるだけで、冬の暮らしの安心度がかなり向上します。

6.ステップ④:衣替えは“生前整理”の絶好のチャンス
冬は厚手のコート、ダウンジャケット、毛布、フリースなど、一つ一つがかさばる物が多く、収納の負担が一気に増大します。その結果、押入れやクローゼットはぎゅうぎゅうに詰め込まれた状態になりがちです。
実はこの衣替えの時期こそが、「使っていない物を手放す」絶好のタイミングなのです。
私たちが整理の現場でよく見るのは、「何年も着ていないコート」「サイズが合わなくなった服」「似たような色・形の服が複数」など、「使わないのに収納スペースを占有している服」が非常に多いことです。
冬物は厚みがあるため、不要な物を減らすことができれば、収納スペースの確保という点で大きな効果があります。
衣替え整理のコツ
「今年着る服」は必ず手前に出す:迷う服は「着ない服」と見なし、一軍・二軍をはっきり分けましょう。
迷う服は“1シーズン保留ボックス”へ:今シーズン着るか迷う服は専用の箱に入れ、冬が終わるまでに着なかったら来年手放すと期限を決めます。
未来の自分が着たい服だけ残す:来年、気持ちよく着ている姿を想像できない服は、思い切って手放すサインです。
靴下やインナーの入れ替え:毛玉や穴が開いたくたびれたものは処分し、新しいものに入れ替える見直し推奨時期です。
毛布の枚数制限:家族の人数に対して必要な枚数を見直します。不要な毛布は来客用として圧縮袋に入れるなどし、収納をスリム化しましょう。
収納がスッキリすると、冬の朝の身支度が驚くほど楽になり、毎日のストレスが軽減されます。

7.冬の快適さを決める“こたつ周りのミニ習慣”
リセット整理で土台を整えた後は、毎日の小さな習慣が暮らしの質を左右します。こたつの魔力に負けないための予防策として、習慣化しておきましょう。
こたつに入る前に、使った物を元の場所に戻す:特に食器や飲み物、新聞などは、「立ち上がれるうちに片付ける」を鉄則にします。
リモコン・スマホの定位置を徹底する:ワゴンやカゴの中に定位置を決め、床に置く習慣を断ち切ります。
ブランケットは使用後必ず畳む:乱雑に丸めておくと、部屋全体にすぐに生活感が出ます。
こたつ布団は定期的に干す:湿気を取り除き、ふかふかを保つことで、快適さと衛生面を向上させます。
カーペットは週に一度掃除機をかける:ホコリや抜け毛が溜まりやすい場所なので、清潔を保ちましょう。

8.まとめ ─ こたつ前のたった1時間が、冬の3ヶ月を変える
冬の部屋の動線は、こたつを中心として決まります。だからこそ、こたつを出す前の“たった1時間の集中整理”が、その後の冬の快適度を劇的に左右します。
夏の間に溜まった不要な物を取り除く
動線の邪魔になる物を置かないよう配置を工夫する
暖房器具の安全を徹底的にチェックする
冬物の衣類や毛布の量を見直す
このリセット整理をしておくだけで、冬の暮らしは想像以上に軽く、暖かく、快適になります。
部屋が片付いている状態は、心にもゆとりを生み出します。突然の来客に慌てることもなく、ホコリや散らかりにイライラすることもありません。清潔で安全な空間で過ごす冬は、心置きなくリラックスできる、本当の幸福な時間となるでしょう。
整理が苦手な方や、高齢の家族がいる家庭ほど、この“こたつ前整理”は事故の予防や生活の質の向上という点で、大きな効果を発揮します。
もし、「物が多すぎて自分一人では難しい」「押入れの奥から手を付けるのが大変」といったお困りごとがあれば、プロの整理収納アドバイザーや専門業者の手を借りるのも一つの賢明な方法です。短時間で安全に、効率よく、お部屋の冬支度をお手伝いできます。
今年の冬は、こたつに入る瞬間から“気持ちいい”部屋で過ごしませんか?ぜひ、こたつ前のリセット整理を試してみてください。
