コラム

COLUMN

投稿日:2026年10月8日

実家が空き家になる前に。今すぐできる3つの備え

はじめに:「いつか」は思っているより早く来ます

「親が元気なうちは、実家のことを考えるのはまだ先でいい」。多くの方がそう感じていらっしゃいます。しかし、遺品整理の現場に伺っていると、「もっと早く話しておけばよかった」「何から手をつければいいのかわからないまま、時間だけが過ぎてしまった」というお声を数多くお聞きします。

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は約900万戸、住宅全体に占める割合は13.8%と、いずれも過去最高となりました。その中でも、相続や親の施設入所をきっかけに「誰も住まなくなった実家」が占める割合は少なくありません。

空き家になった実家は、放置すればするほど、家も、荷物も、そしてご家族の心の負担も大きくなっていきます。逆に言えば、実家が空き家になる前に少しだけ準備をしておくことで、その負担は大きく減らせます。

なぜ、空き家になる前の準備が大切なのか

そもそも、なぜ準備が必要なのでしょうか。空き家を放置した場合に起こりうる問題を、まず整理しておきましょう。

1. 建物の傷みが想像以上に早い 人が住まなくなった家は、換気や通水がされないため、湿気がこもりカビや傷みが進みます。屋根や外壁の劣化、水道管の腐食、庭木や雑草の繁茂など、数年で状態が大きく変わることも珍しくありません。

2. 近隣トラブルや防犯上のリスク 雑草や害虫、悪臭、台風による屋根材の飛散、不法侵入や放火の不安など、近隣の方へ迷惑をかけてしまうおそれがあります。万が一事故が起きた場合、所有者として管理責任を問われることもあります。

3. 税金や法律面での負担 適切な管理がされていない空き家は、自治体から指導や勧告を受けることがあります。2023年の空家等対策特別措置法の改正により「管理不全空家」という区分が設けられ、勧告を受けると固定資産税の住宅用地の軽減措置(最大で6分の1など)が外れてしまうペナルティがあります。また、2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の登記が法律で定められています。

4. 家族の心の負担 何より大きいのは、気持ちの面かもしれません。親御さんを亡くされた悲しみの中で、膨大な荷物と向き合い、きょうだいで意見がぶつかる。そんな状況は、ご家族にとって大きなストレスとなります。

こうした問題の多くは、事前の備えによって防げます。それでは、具体的な3つの備えを見ていきましょう。

備え①:家族で「実家の将来」について話し合う

最初の、そして最も大切な備えは「話し合うこと」です。片付けも手続きも、家族の意向が共有されていなければ前に進めません。

話し合いたいこと

  • 親御さんは、これからもその家に住み続けたいか

  • 住めなくなったとき(施設入所や入院など)、家をどうしたいか(売却・賃貸・解体・誰かが住む)

  • 誰が実家の管理や手続きの中心を担うか

  • 費用はどのように負担するか

  • 仏壇、お墓、思い出の品など、大切にしたいものは何か

切り出し方のコツ

「相続の話をしよう」と切り出すと、親御さんは「財産を狙われている」「もう死ぬと思われている」と感じ、身構えてしまうことがあります。

おすすめは、ご自身の話や世間の話題をきっかけにすることです。

  • 「知り合いの実家が空き家になって、大変そうだったんだ。うちはどうしようか」

  • 「ニュースで空き家の特集を見たんだけど、うちも元気なうちに一緒に考えておきたくて」

  • 「お正月やお盆に帰省したとき」など、家族が自然に集まるタイミングを選ぶ

大切なのは、結論を急がないことです。最初は「こう考えているよ」と親御さんの気持ちを聞くだけで十分です。何度かに分けて少しずつ話すほうが、本音が出やすくなります。

きょうだい間でも共有を

親子だけでなく、きょうだい間の情報共有も欠かせません。遺品整理の現場では、「長男が一人で進めてしまい、あとから揉めた」「遠方に住む妹に相談なく処分してしまった」といったトラブルをよく見かけます。話し合った内容は、LINEグループやメモなどで記録して共有しておくと安心です。

備え②:荷物の整理を、少しずつ始める

2つ目の備えは、実家の荷物の整理です。遺品整理の現場で痛感するのは、荷物の量が、家族の負担を大きく左右するということです。

一般的な戸建ての実家には、数十年分の暮らしの荷物が収まっており、整理に数日から数週間、場合によってはそれ以上かかります。これを、気持ちの整理もつかないうちに短期間で片付けるのは、心身ともに大変な作業です。

「親が元気なうちに」が理想

親御さんがお元気なうちに、一緒に少しずつ整理を進めておくと、後々の負担が大きく変わります。ここでのポイントは「捨てさせる」のではなく「一緒に整理する」という姿勢です。

長年使ってきたものには、それぞれ思い出があります。「もう使わないでしょう」「いらないものばかり」といった言い方は、親御さんの気持ちを傷つけ、かえって整理が進まなくなる原因になります。

無理のない進め方

① 小さな場所から始める いきなり押入れや納戸に取りかかると、挫折しがちです。まずは玄関、洗面所、冷蔵庫の中など、判断しやすく範囲の狭い場所から始めましょう。

② 「残す・手放す・迷う」の3つに分ける 迷うものは無理に決めず、「迷う箱」に入れて保留にしておきます。時間をおくと、気持ちが整理されて判断できることもあります。

③ 思い出の品は一緒に眺める時間を持つ アルバムや手紙、趣味の道具などは、整理しながらお話を聞くことで、親御さんの人生を知るかけがえのない時間にもなります。写真に撮って残す、一部だけ手元に残すといった方法もあります。

④ 大きなもの・危険なものから優先する 使っていない大型家具、古い家電、期限切れの食品や薬、危険なもの(スプレー缶、ガスボンベなど)は、安全面からも優先的に整理しておきたい対象です。

自分たちだけで難しいときは

重い家具の搬出、大量の不用品の処分、遠方で通う時間が取れないなど、ご家族だけでは難しい場面も多くあります。そんなときは、専門の業者に一部だけ依頼するのも一つの方法です。「全部お任せ」でなくても、大型家具の搬出だけ、不用品の回収だけといった部分的なご依頼も可能です。生前整理や実家の片付けを、親御さんの意向を尊重しながらお手伝いする業者もありますので、気軽に相談してみてください。

備え③:書類・権利関係・管理体制を整えておく

3つ目の備えは、見えにくいけれど非常に重要な「情報の整理」です。実家の片付け以前に、書類や権利関係がわからないために手続きが止まってしまうケースが少なくありません。

確認しておきたい書類・情報

  • 不動産の権利証(登記識別情報)または登記事項証明書:名義は誰になっているか。すでに亡くなった祖父母の名義のままになっていないか

  • 固定資産税の納税通知書:所在地、評価額、納税額の確認に役立ちます

  • 火災保険・地震保険の証券:契約内容や更新時期を把握しておく

  • 通帳・保険証券・年金関係の書類:保管場所を家族が把握しておく

  • 公共料金・インターネット・新聞などの契約情報:解約や名義変更の手続きに必要です

  • 鍵の所在:玄関、勝手口、物置、車庫などの合鍵をどこに保管しているか

  • ご近所・自治会・親族の連絡先:何かあったときの連絡網として

これらをノートやファイルにまとめた「実家の情報ノート」を作っておくと、いざというときに非常に役立ちます。エンディングノートの形式で、親御さんと一緒に書き込んでいくのもおすすめです。

相続登記の確認も忘れずに

2024年4月から、相続登記の申請が法律で義務化されました。もし実家の名義が亡くなった方のままであれば、早めに確認し、必要に応じて司法書士などの専門家に相談しましょう。名義が古いままだと、将来的に売却や解体、賃貸などの選択肢が取れなくなってしまいます。

空き家になった後の「管理体制」も決めておく

実家に誰も住まなくなった場合に備え、次のことも決めておきましょう。

  • 月に1回程度、誰が換気・通水・庭の手入れに行くか

  • 遠方で通えない場合は、空き家管理サービスを利用するか

  • 郵便物の転送手続きはどうするか

  • 防犯面の対策(センサーライトや、人の気配を感じさせる工夫など)

家は、人が出入りして空気を入れ替えるだけでも傷み方がまったく変わります。「誰が・いつ・何をするか」を決めておくだけで、管理の負担と近隣への不安を大きく減らせます。

活用できる制度も知っておく

相続した空き家の売却に関しては、一定の要件を満たす場合に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)があります。また、各自治体には、空き家バンクや解体費用・リフォームの補助金制度を設けているところもあります。内容や要件は自治体や時期によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口や、税理士・司法書士などの専門家に早めに確認することをおすすめします。

まとめ:完璧を目指さず、できることから

ここまで、実家が空き家になる前の3つの備えをご紹介しました。

  1. 家族で「実家の将来」について話し合う

  2. 荷物の整理を、少しずつ始める

  3. 書類・権利関係・管理体制を整えておく

すべてを一度にやろうとする必要はありません。「今度の帰省で、実家の鍵の場所だけ確認する」「次の連休に、洗面所の棚を一緒に片付ける」。そんな小さな一歩で十分です。

準備をすることは、決して「親の死を待つ」ことではありません。むしろ、親御さんの今の暮らしを安全で快適にし、親御さんの思いを聞き、家族の絆を深める時間にもなります。そして、いざというときに、ご家族が悲しみと向き合う余裕を残すための、思いやりの備えでもあります。

私たちは、これまで数多くのご家庭で、遺品整理や実家の片付けのお手伝いをしてきました。「何から手をつければいいかわからない」「家族だけでは進められない」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。ご家族のお気持ちに寄り添いながら、無理のないかたちで最適なプランをご提案いたします。

実家のことを考え始めた「今」が、いちばん良いタイミングです。まずは小さな一歩から、一緒に始めてみませんか。

この記事の筆者

株式会社ベストサーブ

BESTSERVE Co., Ltd.

当社は、遺品整理・特殊清掃をはじめ、不用品買取・ゴミ屋敷片付け・消臭消毒・ハウスクリーニング・ リフォームまで、暮らしに関わる幅広いお困りごとに対応しています。
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